箱根の温泉の歴史は古く、天平十年(738年)に淨定坊によって開かれたと伝えられています。このことは江戸中期の俳人で古典学者でもあった北村季吟が、元禄二年(1689年)に著した『湯もとの記』に書いています。『湯もとの記』によると、湯本温泉の発見のいきさつは、おおよそ次の通りです。

「聖武帝の天平八年(736年)に疱瘡が蔓延したとき、加賀白山の開創者泰澄の弟子浄定坊が関東に遣わされ、お祓いをすると病気が治まった。そこで浄定は、天平十年に湯本に白山権現を勧請して十一面観音を刻み、十一面の修法を行うと湯本の山が裂けて霊泉が湧出し、それに浴した人々は悉く疱瘡が治った。」
とあり、箱根の温泉は湯本温泉の発見にはじまると考えられます。
 
箱根9号(古来の湯)源泉地
   
         
             
       
             
    北条早雲(伊勢宗瑞)は、統治のため小田原に入って(明応四年・1495年)から領国支配の要の一つとして、早くから湯本に注目し、早雲庵という小宇を設けていたと考えられます。この思い入れの強さは、早雲の遺言によって氏綱が大永元年(1521年)に金湯山早雲寺を建設、境と大徳寺の以天宗清を請じて開山したというのが定説になる程でした。早雲は傷の治療や戦いの汗を流すためにと、しばしば訪れ湯治気分に浸っていました。

「熊野神社例祭趣意書」によると

「今より千三百余年前、役小角(えんのおづね )つゞいて万巻上人等先徳の苦心のもと、天地の神々に祈請し世の人々救済の為、温泉を開発させたと伝えられている。…(略)…湯坂山麓湯本の地にこんこんとたぎる湯壷の辺り、古来より熊野大権現が奉斉されている。筥荷路を行き交う旅人の病気を癒し、心を和ましめ守護し、如何ばかり厚き神の御恵みを与えられたことであろう。この辺りの地名は古くから湯場といわれていることから考えて、箱根温泉草分けの湯であろうと思われるが、この権現の湯は源頼朝公、北条早雲公足洗いの所とされ、…(略)…」(湯場権現講)とあります。
又、『新編相模国風土記稿』『七湯の枝折』の中には、氏綱以下早雲寺に参詣する武将は湯本で入浴したと伝え、湯本の湯は北条氏の「足洗いの湯」という伝称があると記しています。
 
北条早雲
   
         
             
             
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